若い世代の獲得に走り出す

2011.04.07

第三次ブランドブームの特徴は、ブランドファンの激しい低年齢化にある。それまで、ブランド品は若くてもせいぜい購入者は大学生で、高校生のブランド品所有者は少数派だったが、このブームで高校生もその一員に加わった。女子高生たちが一気にブランドに夢中になり、ハイティーン向けの雑誌もブランド特集を繰り返し、ブランド品を手にしたコギャルが街にあふれ出ることとなる。一九九〇年代半ばからブランドがファッションの世界に足を踏み入れたことは先に述べた通りだが、それによってブランド品は「定番で長く使えるモノ」から、「今の流行りのモノ」「今一番オシャレなモノ」という色合いが強まった。いつの時代も若い世代はその時どきのファッションを追いかける。流行には敏感だ。ブランドが流行を取り入れたファッショソになったから、高校生たちも飛びついたのだ。シャネルの日本法人のリシャールーヲフス社長はシャネラーについて、次のように振り返っている。ハイティーンの女性誌で話題になった「シャネラー」の問題がありました。あの時、私達シャネル側は防御に回って、必ずしも適切に対処しなかったことを反省しています。だって、「シャネラー」現象は、ハイティーンからシャネルへのラブーコールだったのですから。私達は、それに対してもっと優しく応える方法を考えるべきだったのです。「私達(ハイティーン)はこんなに愛しているのに、(シャネルの側は)愛してくれない!」。これはココーシャネルの精神に反することでもあったんですね。(オンワードファッションシステム『トレントセッター』二〇〇一年一月号)コラス社長が触れている「問題」を簡単にまとめると、「シャネラー」という予期せぬ人種の出現に驚き、九八年にシャネル側か商品を提供する雑誌を絞り込んで、敷居を高くした一件を指している。いくつかの女性誌はシャネル特集を控え、その一方で他のブランドの特集を変わらず続けたため、結局、シャネルだけが売上を落とす結果となった。この一件はシャネルにとってはよほど痛かったのだろう。以後、シャネル側はシャネルを取り上げる雑誌に注文をつけることはなく、むしろ積極的に門戸を開いている。シャネルが高校生のシャネルファンを容認したことは興味深い。シャネルの本来のターゲットは大人の女だ。だからこそ、コギャルのシャネラーなどブランドにふさわしくないと立腹したのだが、日本にはそういった正論が通用しないことにシャネルは気づいたのだろう。若い世代こそブランドの主要な客であり、「ブランドは大人のモノ」という正論をかざしてコギャルたちをシャネルから遠ざけようとすると痛い目にあうことをこの一件で身をもって知ったのだ。これはシャネルだけの話にはとどまらない。第三次ブーム以降、本来は、良いモノを見極める目を持った大人を顧客として想定し、「質が良く長く使える」ことを最大の売り物にしてきたはずの海外ブランドが、あきれるほど無節操に若い世代の獲得に乗り出している。正論を捨てたという点で、これは日本における海外ブランドビジネスの大きな転換点だったように思う。