2002年、「手」の年の「エルメスの世界」(第1巻)を例に見ていこう。いずれの年も、全体の構成はよく似た形だ。巻頭ではデュマが「年間テーマ」とその由来を述べている。「わたくしどものようなメソンとしては、手を褒め讃えると自画自賛だと言われるでしょうか?職人にとって、もちろん手は一番の道具です。けれども手は単に肉体的作業に限りません。手は精神的行動もするものです。かつて哲学者のドゥニ・ドゥ・ルージュモンは『手で考えること』を推奨しました(彼については、本号の中でも少しふれています)。彼の勧めは次のように続きます。手を使うことによって考えに重石ができ、その重みが思考を具体的なことからかけ離れてしまうのを防ぎ、その結果、つねに正しい判断ができるというのです。手の動きにはいろいろあり、たとえば顔に向かってさしのべたり、何かを与えるときには開いたり、あるいはまた額を撫でたり、小鳥の体を温めてやることもあります。美を作り上げ、傑作を生み出したり、オーケストラを指揮するのも手です。友情を伝えたり、あるいは伝わってきたりもします。なんて素晴らしい交流方法でしょう。そしてなんという表現力なのでしょう。そういった理由と、それに私があなたの手を握れるのがうれしいから握手なんて純フランス的仕草を言うと、シャルル・ダンツィグのお目玉を受けるかもしれませんね。エルメスは手を祝いたいのです。エルメスのメチエは手のおかげです。そこでわたくしどもは今年2002年の12ヵ月間を手のために捧げようと決めたのです」次いで、「手とはいったい?」と称した特集が始まる。ここではエルメスの6人のスタッフが登場し、「手」について語っている。右側のページに手のクローズアップ、そして左側には手の主の顔写真だ。「エルメスの庭師」ヤスミナ・デムナティ。「種まきは素晴らしい体験です。小さな命の種が転がるのを指に感じること、それをビクトール・ユゴーは『種をまく人の厳かな動き』と表現していましたが、それが種をまくことの特典なのです。古くからの言い伝えに、手と手のあいだに天使が宿るというのがありますが、いたずらにそう言われてきたのではないと思います」